| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) D2-14

GPSテレメで見る冬眠期・冬眠明けのヒグマの行動

*小平真佐夫,中西将尚,葛西真輔,岡田秀明,山中正実(知床財団)

ヒグマの冬眠に関わる行動は従来からVHFテレメにより調査されてきたが、冬眠穴の特定とそのモニタリングに大きなコストがかかり、短期間に多くの標本数を得ることは難しい。一方、GPSテレメでは自動的に蓄積されるデータより冬眠穴に通わずとも冬眠行動の一部を類推することが可能であり、初期投資は高いが効率よく標本数を得られる。ここでは、知床国立公園においてGPSテレメを装着したヒグマ9個体について、2004年11月から2007年5月までの3回の越冬期間中に得られたのべ12頭分(メス11頭オス1頭)の冬眠期データから、冬眠状況(冬眠の開始と終了、冬眠日数、冬眠標高など)を推定し、メス成獣に関しては冬眠明けの繁殖状況(単独か新規出産か)との関係を考察した。冬眠は11月12日から12月18日の間に始まり、3月1日から5月14日の間に終了した。冬眠日数は平均120日(73-183日)であった。これらのうち、オスと幼獣、そして冬眠明け繁殖状況が不明のメスを除いたメス6頭について、冬眠明けに単独だった3頭と出産していた3頭の間で冬眠状況を比較した。出産個体は単独個体より冬眠日数が長く、冬眠明けが遅いことが予測されたが、高齢の単独メスがもっとも冬眠明けが遅かったため、グループ間に有意差は見られなかった。同様に、冬眠標高でも繁殖状況による違いは検出されなかった。冬眠行動には個体間・年度間で変動要因が多く、統計的解析を行うには標本数が不十分であったと思われる。今後も標本数を蓄積し、分析を継続する予定である。

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