| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) D2-15

性比1/2または偏った性比の進化の最適性

*吉村仁,泰中啓一,林太郎(静岡大学)

多くの生物の性比は、1/2またはその近傍である。特に、人間など多数の生物では、1/2から少しオスに偏った性比が観察されている。これらの性比の進化を説明する理論としては、フィッシャーの理論がある。これは、ゲーム理論による説明で、子孫への貢献度を最大化するような配分は1/2であるということである。この理論は、1/2性比は説明可能であるが、1/2から少しでも偏った性比の説明はできない。また、性比により死亡率に偏りがあっても、1/2性比の最適性は変化しない。これらの結果から、人間など1/2から少し偏った性比の説明はできないことが明白である。フィッシャーの理論の問題は、オスメス共に交尾が保障されていることを仮定している。つまり、無限集団であり、交配の不可能性を考慮してない。本発表では、交配可能性、つまり雌雄の出会い可能性により子孫の繁殖が依存する場合を格子モデルにより検証する。格子のセルにオス・メスを配置して、空きセルに繁殖する場合に、性比がどのような結果を及ぼすか検証した。ここで、検証法は個体群の存続する場合の定常密度結果から判定した。死亡率に偏りがない場合は、1/2が最適な存続率で、死亡率に偏りがある場合は、死亡率の大きい方へ少し偏ることが示された。これは人間など性比が僅かにずれた性比の最適性及び安定性を説明する。

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