| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) E1-07

琵琶湖の低酸素化に伴う底生動物群集の変化について

西野麻知子(琵琶湖環境科学研究センター)・大高明史(弘前大・教育)

琵琶湖では、2007年1〜3月の暖冬で湖水の循環が大幅に遅れ、北湖深底部付近の溶存酸素濃度が回復した期間が、3月下旬の1週間程度と短かった。そのため、春から夏にかけて湖水が成層するとともに、深水層の溶存酸素濃度が例年より大きく低下するのではと懸念されていた。じっさい、2007年10月に、北湖第一湖盆中心部(水深90m付近)の湖底直上層で0.3〜0.4mg/L(酸素飽和度2〜3%)というごく低い濃度を記録した。ただ滋賀県が調査を行っている近傍の水深90m定点での最低濃度は1.7mg/L(酸素飽和度14%)だったため、ごく低い酸素濃度は、北湖第一湖盆中心部付近に限定されていたと考えられる。

我々は、1992年より県の水深90m定点で底生動物調査を続けていることから、低酸素を記録した2007年10月より前と後とで群集を比較した。採泥器を用いた調査では、優占する底生動物である貧毛類の密度が2007年10月以降にやや低下したものの、それ以前に観測された年変動の範囲内だった。一方、底曳網を用いた大型底生動物調査では、11月に固有の底生魚イサザの生きた個体に混じって死骸も多く採集された。10月にはイサザの死骸は採集されず、またこれまでイサザの死骸が多く採集されたことはなかったため、低酸素状態との関連が疑われる。ただ同所的に生息する固有種のアナンデールヨコエビやビワオオウズムシについては、もともと年変動が大きいこともあり、著しい密度の低下はみられなかった。

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