| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) E1-08

高層湿原の植生に応じた底生動物群集の食物網

*加藤義和(京大・院・理), 奥田昇(京大・生態研センター), 陀安一郎(京大・生態研センター), 竹門康弘(京大・防災研), 堀道雄(京大・院・理)

京都市北部に位置する深泥池は9haほどの貧栄養湿原であり, 中央部には高層湿原の浮島がある. ここには,維管束植物とオオミズゴケの優占する凸部 (hummock), ハリミズゴケの優占する凹部 (hollow), ならびに維管束植物がまばらに生える泥地 (bare hollow) がパッチ状に分布し, 特異的な景観を形成している. これら3種の植生では,光合成過程が空気中か水中かによって生産される有機物の炭素安定同位体比が異なることがわかった. そこで本研究では, 浮島上の植生類型ごとに底生動物を採集し, 炭素ならびに窒素の安定同位体比 (d13C, d15N) を測定することによって, 各種底生動物の栄養起源を調査した.

採集は,2007年6月および12月に行なった. 浮島上の3種の生息場hummock, hollow, bare hollowにおいて底生動物と粒状有機物質(POM)を採集し, 安定同位体比を測定した. 6月には, デトリタス食者である2種のガムシの安定同位体比はd13C=-28〜-22‰, d15N=-1〜2‰の範囲にあったが, 同種であっても生息場ごとにd13Cの値が異なっていた. このことから, 深泥池浮島における底生動物群集の食物網では, 栄養起源が植生類型に応じて異なっていることが示唆された. 高層湿原においては, 植物による生産物は移動することなく同所に堆積する特徴があるため, ガムシは植生類型に応じて異なる植物由来のデトリタスを摂食していると考えられた. 本研究では植生類型ごとの食物網を示すとともに、植物遺体の安定同位体比と底生動物の食物網との対応関係についても考察する.

日本生態学会