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一般講演(口頭発表) E1-11
生物資源は、食料資源として、あるいはエネルギー資源として利用され、ヒトにとって必要不可欠な役割を担っている。その一方で、ヒトによる生物資源利用は、資源の枯渇や生態系サービスの低下などの様々な環境問題を引き起こしている。これはヒトによる生物資源利用のもつどのような特徴によるものだろうか。ヒトによる生物資源消費は、ヒト以外の生物の資源利用と比較して質的に異なるのだろうか。また、その資源利用の特徴は、ヒトによる生態系へのインパクトとどのように関連づけることが可能だろうか。
本発表では、ヒトによって利用されている餌生物種に着目することで、ヒトの食物網の中での位置を特徴づけることを目的とした。具体的には、漁業を捕食者「ヒト」による補食活動としてみることによって、被食者としてどのような特徴を持つ魚種が選ばれているかを明らかにする。そのために、データベースFishBase(Froese, R. and D. Pauly. Editors. 2007)において公開されている、カリブ海域での魚群集データと同海域における漁獲データを利用した。魚種の特徴として、体サイズ、栄養段階、単位バイオマス維持に必要な被食者バイオマス(Q/B)等を利用した。一般的に、体サイズと栄養段階、体サイズとQ/Bの間には密接な関係が認められている。母集団としてのカリブ海魚群集におけるこれらの関係と、ヒトによって利用されている魚におけるこれらの関係を比較することで、ヒトがどういった特徴を持つ資源を利用する傾向にあるのかを解析した。そこから得られた結果をもとに、ヒトの食物網における特徴を挙げた上で、その特徴をエネルギー効率の観点から考察し、ヒトによる資源利用の生態系レベルでの特徴を論じる。