| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) E1-14

無機人工土壌上に発達した土壌小型節足動物群集

*齋藤星耕,武田博清

トビムシ目は、ダニ目とならんで温帯林の森林土壌において高密度に生息する小型節足動物であり、分解者群集の重要な要素である。トビムシの群集は様々な要因との関係において数多く研究され、土壌における資源の異質性の寄与が指摘されてきた。しかし、ここでいう資源の異質性には食物資源の多様性と、住み場所資源の多様性とが内包されており、これまで分離して検討されてこなかった。

そこで我々は、それ自体は食物として利用できない多孔質の人工土壌を林床に置き、その中に発達するトビムシ群集を調査した。時間の経過とともに個体数密度は増大し、3年間で自然土壌に比べて50%程度まで増加した。群集組成においては、自然土壌の群集と共通な優占種があらわれたが、その順位は時間と共に変化し、人工土壌中の有機物の量などの要素の変化との対応が示唆された。次に、物理構造の多様性が群集に及ぼす影響を調べるために、人工土壌と砂利を単独で置いた場合と混合した場合とで群集組成が変化するかを検討した。人工土壌と砂利を混合した土壌の中に発達したトビムシ群集は、それぞれを単独でおいた場合の群集に比べて、中間的な組成をもっていた。以上より、無機土壌中での環境変化に対応した群集の遷移過程と、ベースになる土壌の物理構造の2軸が、群集組成に影響を及ぼすことが示唆された。

日本生態学会