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一般講演(口頭発表) E2-06
20世紀半ば以降の地球温暖化は、人類による産業革命以降の温室効果ガス (CO2, CH4など) 濃度の上昇が原因である可能性は非常に高く、このままだと、今後100年の間に1.1から6.4℃の気温上昇が生じると予測されている。その上昇幅は高緯度になるほど大きいと考えられ、北方森林生態系は大きな打撃を受ける可能性が高い。これまで「警告」を役割としてきた地球温暖化研究は、これからは進行する気候変動に備えるため、より精度の高い科学的基盤を提供していかねばならない。
北海道大学苫小牧研究林では、冷温帯の代表的な森林であるミズナラ自然林において、電熱ケーブルを使って温暖化する操作実験を行っている。この実験の特徴は15m以上の林冠構成樹木を扱っている点にある。これまでの実験では比較的扱いやすい草本や木本実生の地上部を研究対象としてきたが、北方森林生態系の応答を明らかにするためには森林生産量の大部分を占める樹木林冠部を含める点が欠けていた。
この研究の目的は「地球温暖化に対する北方森林生態系の応答を明らかにするため、樹木の地下部を暖める人工的な温暖化現象を電熱ケーブルにより野外で作り出し、森林生態系の生産性や物質循環、生物多様性、食物網などへの影響を解明する」ことである。今回はその中で、林冠部おける植物?昆虫の相互作用への間接効果について発表する。2007年度の調査から、地下部の温暖化は林冠部の葉の食害度を減少させ、さらに昆虫群集(咀嚼性、虫瘤性、潜葉性、汁吸性昆虫)も大きく変えることが明らかになった。このメカニズムについて、温暖化により改変された植物形質(LMA,N,C/Nなど)を使ってボトムアップの視点から考察したい。