| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) E2-13
系外資源に依存する雑食性の捕食者や植食者は、しばしば当該の群集や生態系の構造や機能を大きく改変する。系外資源はふつう消費者の消費によっても減らないため、当該システムに対する影響が永続するからである。これは生態系を横断する見せかけの競争(apparent competition)や、見せかけの栄養カスケード(apparent trophic cascade)として、ここ10年来群集生態学の分野で注目を集めてきた。演者らの研究により、最近起こっている外来種やシカによる恒常的で強い生態系インパクトには、少なからずこの仕組みが関与していることがわかってきた。日本各地で水草や水生昆虫の減少の主要因となっているアメリカザリガニは、水域外から流入するリターで支えられていること、奄美大島で多くの希少種に脅威を与えているマングースは、冬鳥の飛来により繁殖率が高レベルに維持されていること、さらに生産性の高い開放環境の餌がニホンジカの高い妊娠率を維持し、それが森林の下層植生や土壌に大きな影響を与えていること、などである。これはまさに生態系を横断する見せかけの競争であり、最近外来種問題で話題になっている”hyperpredation”の主要な原因であると思われる。本講演では、こうした仕組みとそれが生じる背景についての共通点に注目しながら、外来種やシカ問題が抱える問題の本質を考察する予定である。