| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) F1-01

サーモグラフィによる温度計測に必要な放射率値

*大塚公雄(東医歯大・生材研), 金沢至(大阪市自然史博)

放射温度計や赤外線サーモグラフィは測定対象から放射される赤外線を元にその温度を計測するものである。これは、物体がその温度に応じた波長分布と強さを持つ電磁波を放射するというプランクの放射則を応用したものである。赤外線サーモグラフィは非接触かつ、非拘束での計測が可能である一方高価であったため、監視用や医用分野等に用途が限られてきた。しかし、近年急速な性能向上と価格低下が進み、比較的安価なボロメータ型のサーモグラフィでも秒30コマ程度の高速な計測が可能になり、生態学や行動学の分野への応用も進みつつある。

サーモグラフィで温度を計測する際に注意しなければならないのが、放射率による誤差である。上述のプランクの放射則は仮想的な物体である黒体に関して成り立つもので、実際の物体(灰色体)からの放射エネルギーはこれより小さく、その黒体放射との比が放射率と呼ばれる。また、黒体が周辺からの放射を全て吸収してしまうのに対し、灰色体は一部(反射率 = 1 − 放射率)を反射するのでこれも誤差の原因となる。これらの誤差の修正には対象とする物体の放射率の値が必要だが、生物の放射率のデータは少ないのが現状である。大塚が所属する研究グループは簡便に放射率等の熱物性値を計測する装置を開発してきた。この装置では測定対象が受ける環境からの放射温度を瞬時に上昇させた後一定に保つことで放射率と暖まりやすさの指標である熱浸透率を同時に計測するものである。今回の講演では、この計測法の概要と共に、この装置を用いてヒト以外の生物に関する計測を行った結果を報告する。

日本生態学会