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一般講演(口頭発表) F1-02
亜熱帯や熱帯域の潮間帯には、マングローブ林が広がる。マングローブの林床は、干潮時は露出しているが、満潮時には海面下に沈んでしまう。そのため、林床に生息している昆虫は、干潮時にしか活動できず、満潮時は海水の影響を受けない場所へ避難する必要がある。マングローブスズは、マングローブ林にのみ見られるバッタ目の仲間で、満潮時にはマングローブの幹の上で休止しているのが観察される。発表者らの最近の研究により、マングローブスズの歩行活動は、野外の潮汐サイクル(約12.4時間サイクル)よりも少し長めの自由継続リズム(概潮汐リズム)を示すことが明らかになっており、マングローブスズは恒常条件下では約12.6時間ごとに数時間休止することが分かっている。つまり、マングローブスズは、体内時計を使って満潮を予め“予期”して避難していると考えられた。ただし、体内時計の周期は、野外の潮汐サイクルより少し長めであるため、体内時計を野外のサイクルに合わせる(同調させる)必要がある。本研究の目的は、マングローブスズが体内時計を同調させるために利用する環境因子(同調因子)を明らかにすることである。
私たちは、概潮汐リズムの同調因子として、潮汐に関連した水位の変化(上げ潮への接触)に注目しており、室内で干満を再現できる実験飼育装置を作り、水への接触によって自由継続リズムがどのように変化するのか解析した。本発表では、その途中経過を報告する。