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一般講演(口頭発表) F1-04
幼虫の移動能力が乏しい植食性昆虫においては、メス成虫が幼虫の餌に適した奇主植物を選んで、孵化した幼虫がすぐに採餌出来る場所に産卵するのが適応的であろう。捕食者や競争者が少ない場所ならなお良い。しかしながら卵が産みつけられてから孵化や羽化に至るまではタイムラグがあり、幼虫にとって終始良い環境である場所を確保することは容易ではない。メス成虫が将来の環境まで予測して産卵することができれば、より有利になると考えられる。本研究で用いたネムノキマメゾウムシは種子捕食性のスペシャリストで、ネムノキの種子が非常に小さい時期から産卵を開始する。さや上の卵から孵化した幼虫は、最寄りの種子に侵入して内部を食害する。いったん潜り込んだ種子から近隣の種子に移動することはできないため、種子が十分な大きさに成長しなかった場合は餌不足に陥り成長途中で死亡する。そこで、ネムノキマメゾウムシのメス成虫は種子が十分な大きさに成長することを予測できているかどうかを調べた。
調査は2001年から2004年に和歌山県橋本市の紀ノ川河川敷で行った。まず、毎年新しく実った任意のさやにマークをつけ、1週間おきに調べて新しい産卵があればそのそばにマジックペンで印をつけた。調査したさやは産卵シーズン終了後に回収してきて実体顕微鏡の下で解剖し、産みつけられた卵の産卵時期と最寄りの種子の大きさを4段階で評価して記録した。また、ネムノキマメゾウムシ幼虫に対して致死的な効果を持つホソヘリカメムシの吸汁の有無についても調べた。その結果、最終的に十分大きくなった種子では卵密度が有意に高く、またカメムシ吸汁痕がある種子よりも無い種子の卵密度の方が有意に高かった。従ってネムノキマメゾウムシのメス成虫は大きくなる種子を予測できており、その判断基準にホソヘリカメムシの吸汁痕が関わっている可能性が示唆された。