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一般講演(口頭発表) F1-05
大海原を移動するマグロの行動を調べることは容易ではないが、その保護管理には大変重要な情報である。IT技術の進歩で記録型標識(アーカイバルタグ)が開発され、現在、国内外で活発な調査が行われている。データは急速に蓄積されておりマグロの回遊・行動生態が解明されつつある。
遠洋水研では、水産庁からの委託を受け、国際漁業管理機関「みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)」の科学調査計画の一環として、2001年よりアーカイバルタグを使用した標識放流を実施している。アーカイバルタグ(以下、タグ)とは、カレンダーと時計を内蔵し、魚の体温、水温、水深及び照度を記録できる標識である。照度データからは魚がいた位置を推定できる。タグは魚の腹腔内に埋め込んで放流する。非常に強力な調査機器だが、データを得るには魚が再捕される必要がある。遠洋水研では2001−07年間にケープタウン沖海域で165本、南インド海域で236本、計401本のタグをミナミマグロに装着し放流した。現在まで15本のタグが回収されている。
極めて予備的な解析であるが、回収タグのデータから以下のことが分かってきた。遊泳行動は季節や海域により変化に富んでいる。ある海域/時期では不規則な鉛直遊泳行動を示すが、別の海域/時期では昼に深く、夜に浅いといった規則的な遊泳行動をする。水深500m近くへも潜水することがある。移動に関しては、東経40°(ケープ沖)から4ヶ月かけて東経100°(南インド)まで移動し、再び4ヶ月かけて東経30°まで戻った個体、4ヶ月でケープ沖からオーストラリア大湾まで移動した個体、ケープ沖からほとんど動かなかった個体など、様々な移動パターンが観察された。
今後は、更なるタグの回収を期待しつつ、回遊・行動と海洋環境や漁場との関係を解析する計画である。