| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) F1-06

トウヨシノボリにおけるフィリアルカニバリズムと雌による雄への同型的選好性

*野間口眞太郎,中村拓洋,松永くるみ(佐大農)

トウヨシノボリ(Rhinogobius sp. OR)は全国の渓流や湖沼に生息するハゼ科の淡水魚である。繁殖期にオスは川底の石の下に巣を作り、メスの訪問・産卵に対し、放精・受精後、卵塊のふ化までの単独保育を複数回繰り返す。オスは卵保育中、巣外に出て摂食活動をすることはほとんどなく保育に専念するが、しばしば保育中の卵を一部または全部食べてしまう。このフィリアルカニバリズムの行動は、オスのコストと利益に関わる条件の平衡的関与を操作的に検証しやすいことから、これまで卵食の発生頻度や食卵割合が、オスの生理条件や配偶機会の条件とどのように関連するかなど、オスにとっての適応性が調べられてきた。一方、卵食が不利である程度は保育オスの場合よりも産卵したメスの場合の方が明らかに高いと考えられる。よって、保育オスによるフィリアルカニバリズムには、オスとメスの間の対立という観点からの解析が当然必要であろう。そこで今回、演者らはメスが提供する卵塊サイズ(体長と相関)とオスの卵塊受け入れ能力(体長と相関)に注目して、オスの卵食の程度が変化するかどうかを調べるとともに、そのようなオスの食卵傾向に対応して、メスは自分にとって都合のいいオスを選んでいるかどうかを実験的に検証した。その結果、オスは自分の体長よりも相対的に小さなメスが提供する小卵塊の場合、高い程度で食卵することがわかった。また、メスは自分が相対的に小さい場合(卵塊を食べてしまう可能性の高い大きなオスを避けて)小さなオスを選び、大きい場合大きなオスを選ぶ傾向があることがわかった。

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