| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) F1-08

カエルの雌は攻撃的か

福山欣司(慶応大・生物),沼澤マヤ(フロッグハウス)

カエル類ではオスの鳴き声に着目した研究が非常に多く、雄間闘争やオスの鳴き声に対するメスの配偶者選択をテーマとした論文が数多く出されている。こうしたカエルにおける行動研究の成果は、「鳴き声を発達させ、攻撃的で積極的なオス」と「自発的な鳴き声はほとんど出さず、非攻撃的で消極的なメス」というイメージを作り出している。繁殖期のメスの目的から見れば、メスの慎重な行動は適応的かもしれない。しかし、採餌などが目的となる非繁殖期の行動では別の可能性もある。そこで演者らは、非繁殖期のメスの行動について研究することにした。

本研究は、トノサマガエル、トウキョウダルマガエル、ナゴヤダルマガエルのメスを用いて、2006年7月から2007年10月のこれら3種の非繁殖期(7月から10月)に行われた。トノサマガエルとトウキョウダルマガエルについては水槽(45x55x40cm程度)にメス2個体を入れ、1日馴化した後、ビデオカメラで行動を撮影した。ナゴヤダルマガエルについては、屋外飼育施設(400x400m)で飼育されている5個体のメスの非繁殖期の行動をビデオで撮影した。

その結果、これら3種で、メスが自発的に鳴くこと、メス同士で鳴き合いがあること、突進や押し合いなどを含む直接的な闘争あること等が観察された。例えば、トノサマガエルでは観察された74回の行動のうち約28.4%が直接的な個体間の接触を伴った。同様にトウキョウダルマガエルでは23.5%(51回の観察例)、ナゴヤダルマガエルでは44.9%(107回の観察例)がそれぞれ直接的な攻撃に至った。

カエルのメス同士に鳴き声によるコミュニケーションや直接攻撃があるという本研究の観察は従来のカエルの行動研究ではほとんど知られていないことである。講演では、ビデオクリップで実際の攻撃行動を紹介しながらメスの攻撃性について考察する。

日本生態学会