| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) F1-10

ニホンヤモリの社会行動

城野哲平(京大・理),乾陽子(大教大・教養)

動物の社会行動は視覚や聴覚、嗅覚などのいくつかの感覚器官へのキューに依存している。爬虫類では、社会行動のレパートリーとして視覚的ディスプレイがよく知られているが、ヤモリ類などでは発声を行う例も知られている。ヤモリ類のうちGekko属は、属内にトッケイヤモリGekko geckoのような発声を頻繁に行う種と、発声行動が知られていない種の両方を含む。そのため、発声行動がどのように進化してきたかを調べる上で、優れた研究対象であると言える。ニホンヤモリGekko japonicusは、日本に広く分布する在家性の普通種で、発声を含めその社会行動はよく知られていない。そこで、本研究ではニホンヤモリの社会行動の詳細を記述することを目的として対面行動実験を行い、個体間の社会行動を無人撮影して動作と音声の解析を行った。その結果、闘争行動として威嚇のディスプレイ、求愛行動としてメス特有の動作など、詳細な行動レパートリーとその社会的役割を明らかにした。また、ニホンヤモリの明瞭な鳴き声が確認された。鳴き方の解析の結果、オスの求愛行動のレパートリーと考えられるオス特有の鳴き方が検出され、ニホンヤモリにおける発声コミュニケーションの存在を示唆した。

日本生態学会