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一般講演(口頭発表) F1-15
ヤマトシロアリ属のコロニー内繁殖システムは、時間・環境に応じて様々なパターンを示すことが知られる。コロニーの発達初期には、有翅虫ペアの外交配 (一夫一妻) により繁殖が行われるが、有翅虫が死亡するとニンフ・職蟻といった子の中から生殖虫へ分化するもの (補充生殖虫) が複数現れ,巣内で近親交配を行い (多夫多妻)、コロニーを存続させる。また多夫多妻コロニーは「1ペア以上の有翅虫によるコロニー共同創設」、「コロニーの融合」によってもつくられうる。
本属は、複数の巣場所をもつ多巣性のコロニー形態をとり、あるコロニーの境界を見分けること、巣内の生殖虫の採集の困難さが、繁殖システムの解明を妨げてきたが、近年では分子マーカーを利用した研究が行われている。本州に生息する、ヤマトシロアリR.speratus、カンモンシロアリR.kanmonensisの2種のヤマトシロアリ属のうち、カンモンシロアリについては、Kitade et al. (2004) によりmtDNAのハプロタイプの解析が行われている。
本研究では、カンモンシロアリの遺伝構造をより詳細に調査する為に,Kitade et al. (2004) で解析された山口県山陽小野田市の個体群に、共優性マーカーであるマイクロサテライト多型解析を適用した。調査を行った方形区内には、33の巣場所があり、これらは23のコロニーによって占められていた。多巣コロニーは30%であった。また、異なる母系を持つ職蟻が混在している巣場所が確認され、コロニー融合の可能性が示唆された。これらに加え、巣内・巣間の血縁度、巣内の繁殖形態、方形区内で見つかった46の初期巣との関係などを議論する。