| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) F2-01

白樺湖におけるカブトミジンコの遺伝的解析

渋谷浩之,小林拓,時下進一,(東薬大・生命)坂本正樹,河鎮龍,花里孝幸,(信州大学山岳科学総合研)伴修平, (滋賀県立大・環境) 太田敏博,山形秀夫,(東薬大・生命)

ミジンコ類は消費者と生産者の境界に位置し、その個体群組成や遺伝的多様性は陸水生態系の維持に必要と言える。特に大型のミジンコであるDaphnia galeata (カブトミジンコ) は、植物プランクトンの補食率が高いため水質改善を目的とするbiomanipulationに有用な生物である。信州大学の花里らは2000年に長野県の白樺湖へ霞ヶ浦由来の単一クローン化したD. galeata (K株)を放流し、水質改善を試みた。放流後、2003年には透明度が2倍程度上昇していた事が報告されている。そこで我々は2006年から花里らと共同で、白樺湖とその近隣湖のD. galeata をK株のミトコンドリアDNA (mtDNA)ハプロタイプとinternal transcribed spacer (ITS)、microsatelliteにおいて比較を行い、白樺湖への定着と白樺湖 D. galeataの個体群組成を調査した。その結果、mtDNA からは K株と同一のハプロタイプを白樺湖D. galeata からは検出できなかった。また ITS に関しては、K 株と近縁なITSハプロタイプ含む3種類のハプロタイプを白樺湖D. galeataから検出した。Microsatelliteによる解析の結果、D. galeataを採取した季節によって集団間の遺伝子構造に差があることが示唆され、近隣湖と比較しても有意差がみられた。これらの事から現在の白樺湖にはK株はクローン系統としては定着しておらず、個体群形成は創始者とそれによる速い適応、または白樺湖への移住が考えられ、さらにこれらがhybrid形成により細分化集団を形成している事が示唆された。

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