| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) F2-07
動物の雄の交尾器は、種間で非常に多様であり、なぜ雄の交尾器に大きな多様性があるのかということについての研究はさまざまなされてきた。特に昆虫で、交尾器の付属器である骨片が精子競争に関係していること、また骨片の形状が精子競争能力の雄間変異を生み出していることが示唆されている。しかし、精子競争が骨片の形状の多様性に関わっていることを示すには、精子競争が異なる集団間を比較し、集団の精子競争のリスクに応じて雄の骨片の形状が進化していることを示す必要がある。本研究では、精子競争のリスクが異なるアズキゾウムシ2系統 (isC系統: 雌の再交尾率が高い系統。jC系統: 雌の再交尾率が低い系統) の交尾器骨片の形状と機能を比較検討した。電子顕微鏡による解析により、isC系統とjC系統とでは、骨片の形状が異なり、isC系統の雄の方が大きな骨片を持っていた。しかし、isC系統において、骨片が大きいほど交尾時間は短くなっていた。短い交尾時間は、その雄の次の交尾が可能になるまでの時間を短縮していたという観察結果とあわせると、雌の再交尾率が高いisC系統の雄は、一回の交尾における精子競争に勝つためというよりも、むしろ複数の交尾機会を得るために、骨片を大きく進化させている可能性が考えられる。