| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) F2-09

インドネシア産マダラテントウHenosepilachna sp.3における同所的種分化のプロセス

*中野進(広島修道大),Sih Kahono(インドネシア科学院),Idrus Abbas (アンダラス大),片倉晴雄(北大),中村浩二(金沢大)

インドネシア産のマダラテントウHenosepilachna sp.3では、LeucasColeusなどシソ科食集団とMikaniaを食べるキク科食集団が知られている。このうちLeucas集団とMikania集団(以下L集団、M集団と略。集団をつけない場合は食草を示す)について、以下の点が明らかになっている。

1)M、L両集団間の交配による卵の孵化率は、同じ集団内で交配した卵の孵化率と同様に高い。2)小ケース内で食草を入れないで交尾選択を調べると、異集団間の交配が頻繁に生じる。3)網室内における産卵選択は非常に厳密で、両集団の雌は本来の食草上でのみ産卵を行う。4)両集団の幼虫とも相手の食草では生育できないし、成虫も相手の食草を摂食しない。F1雑種の幼虫はLで飼育すると、羽化時まで生存率の低下を示さないが、Mで飼育するとML集団を本来の食草で飼育した場合の1/2から1/3程度の生存率になる。5)一令幼虫の食草選択は単純なメンデル遺伝で決定されており、劣性ホモの場合のみMが選択される。6)F1雑種の羽化成虫にLM両食草を選択させると、幼虫期間の食草がいずれであれ、Lを好む。またF1雑種の羽化成虫にいずれか一方の食草だけを与えて飼育を続けると、幼虫期間の食草がいずであれ、Lに比べMで飼育した場合、生存率は著しく低下する。7)Mは比較的最近インドネシアに入り込んだと考えられる植物で、原産地は中南米である。

以上の結果をもとに、いかにしてL集団からM集団が生じたかについて考察する。

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