| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) G2-01

亜熱帯常緑広葉樹林における落葉分解性大型菌類の種多様性と季節消長

*大園享司(京大・農),広瀬大(筑波大・菅平セ)

大型菌類は肉眼で観察可能な子実体を形成する菌類を指し、多くの担子菌類や一部の子嚢菌類が含まれる。落葉分解性の大型菌類にはリグニンやセルロースを強力に分解する種が多いが、熱帯地域におけるその生態については不明点が多い。本研究では沖縄本島北部の亜熱帯常緑広葉樹林において落葉分解に関与する大型菌類の種多様性と季節消長を、林床に発生する子実体の観察により調査した。2007年3、5、6、7、9、11月と08年1月に、0.5haプロット内に発生する落葉分解性の大型菌類の子実体を観察し、その分類群と発生基物を記録した。2007年3〜11月の観察で41分類群の菌類が記録された。発生頻度はMycena sp.1 sect. Basipedes、Mycena sp.2 sect. Roridae、Xylaria sp.1、Crinipellis sp.1の順で高かった。30分類群の菌類の子実体はL層落葉から発生しており、11分類群はA層から発生していた。落葉の樹種別では、イタジイから発生した菌類が17分類群でもっとも多く、続いてイスノキ(7分類群)で多かった。Mycena sp.1は25樹種の落葉から、Mycena sp.2は10樹種から、Xylaria sp.1は3樹種から、Crinipellis sp.1は10樹種から発生した。分子系統学的解析の結果、Mycena sp.1は発生した落葉樹種の科ごとに種内分化している可能性が示唆された。季節消長をみると、6月と9〜11月の2度、子実体発生のピークが認められた。Mycena sp.1では9月に、Mycena sp.2では3月に、Xylaria sp.1では6月に各1回ずつ発生ピークが認められたのに対し、Crinipellis sp.1では6月と9月の2度の発生ピークが認められた。

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