| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) H2-04

コナラ葉群における落葉期の気象要因と葉の生理特性

右田千春, 千葉幸弘, 韓慶民(森林総研)

気候変動に伴う陸上生態系の物質生産の変化予測を行うため、生理機能の環境応答特性の解明が進められている。落葉樹では、光合成生産の開始時期と終了時期が気象条件等によって変動し、その見極めが難しいが、落葉樹においても葉の展開から枯死に至るまでのフェノロジーや物質収支の時空間的変動を明らかにする必要がある。落葉期には、窒素資源が葉から回収され、窒素含有量や光合成の減少が見られ、光合成による剰余生産はマイナスに転じるが、その減少速度や時期を決定する要因などについては未解明な点が多い。そこで本研究では、葉のフェノロジーと光合成速度の季節変化を関連づけ、落葉期の光合成生産の変動を明らかにすることを目的として、異なる環境条件に配置された個葉生理特性の解析を行った。調査林分は茨城県つくば市にある30年生コナラ林である。供試葉を上、中、下層から選定し、落葉直前(10〜11月)のフェノロジーを観察するとともに、気象条件、光合成特性、SLA、窒素含有量、SPAD値の変化を明らかにした。各葉の光環境として全天空写真から開空度を求め、相対光強度に換算した。2007年は、例年に比べて気温の低下が遅く、葉の成長期間が長かった。11月下旬、落葉期に入ると、下層から葉の変色が始まり、SPAD値も低下した。ラマスシュートは1次シュートに比べ、11月末になってもSPAD値が高く、光合成を行っており、落葉も遅かった。ラマスシュートは1次シュートに比べ開葉が2〜5ケ月遅く、葉齢や老化の進行程度が異なり、個葉の生産、維持コストに見合うバランスの取れたベネフィットを得るためにも、落葉時期を遅らせていると考えられた。フェノロジーに応じた個葉の生理特性の変化および気象条件との関係を解析するとともに、林冠レベルで光合成生産の減少過程を検討した。

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