| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) H2-08
京都議定書が締結されて以降、地上観測による炭素収支の研究が急速に進んできた。しかし、各地のデータを統合的に解析し、大陸規模での炭素収支を明らかにする研究は、欧米では活発に行なわれているのに対し、東アジアではほとんどなされていなかった。本研究では、東アジアの熱帯から温帯、亜寒帯までの様々な森林において観測された渦相関法によるCO2交換量のデータを用い、森林生態系の炭素収支を制御している環境要因を明らかにした。GPP(光合成による炭素吸収量)とRE(生態系全体の呼吸による炭素放出量)の年間値は年平均気温に強い影響を受けていた。気温に対してGPPは直線的に増加していたが、これはGPPを強く制御しているPmax(昼間の30分値に非直角双曲線を適用したときの最大GPP。日毎に算出)が日平均気温の強い影響を受けているためである。他の環境要因の影響が小さい理由は、比較的豊富な降雨量により、乾燥などのストレスの影響があまり大きくないためと考えられる。これは欧米の森林と大きく異なる特徴である。REは指数関数的に増加していたが、GPPよりも多くの環境要因の影響(例:撹乱、森林履歴)を受け、それはNEP(=GPP-RE:森林が正味に吸収する炭素量)にも影響を与えていた。