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一般講演(口頭発表) H2-11
土壌から発生する二酸化炭素(CO2)、すなわち土壌呼吸は、化石燃料の消費など人間活動由来のCO2放出量の10-20倍も高く、そのわずかな増減が大気中のCO2)、濃度に深刻なインパクトを与える恐れがある。熱帯林は陸域全体の炭素プールの約40%を占めるため、同地域における土壌呼吸の発生パターンの解明は、生態系の炭素収支を解明する上で重要な研究課題の一つである。しかし、土壌呼吸は土壌微生物や根の呼吸など土壌中の様々な生物活動に由来し、環境条件や土壌構造など多様な要因の影響を受けて変動するため、生物活動が盛んで土壌の不均一性が著しい熱帯林で土壌呼吸の変動特性を解明することは難しい。そこで、土壌呼吸の経時変動メカニズムを明らかにするため、マレーシア・サラワク州の原生林で土壌呼吸の時空間変動の測定を6年間行った。
実験はミリ市近郊にあるランビルヒルズ国立公園で2002-2007年にかけて行った。10m間隔で25点の測定箇所をメッシュ上に設け、密閉型チャンバー法を用いて土壌呼吸を2−6ヶ月おきに測定した。
土壌呼吸の25地点平均値は、2003年3月に3.5μmol m-2 s-1で最低、2006年6月に7.6μmol m-2 s-1で最大となった。6年間を通じて土壌呼吸に明瞭な季節性は認められず、同試験地の温暖湿潤な気候が土壌呼吸の非季節性をもたらしていると考えられた。しかし、土壌含水率と土壌呼吸との間に正の相関が認められたことから、土壌水分状態を指標とした土壌呼吸の推定が可能と考えられた。そこで、土壌呼吸の年変動を推定し、同試験地における降水量、林内温度・水分状態プロファイル、落葉量等の関連要因との関係を検討した。