| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) H2-14

源頭部における渓畔域からの有機物の流入特性

*河内香織(埼玉大学理工学研究科),三島啓雄(Natural Resources Research),長坂晶子(北海道立林業試験場)

はじめに

渓畔林から渓流に流入した有機物が水生動物に利用されている源頭部は,エネルギー供給の場として重要である.日本の源頭部は流路勾配や側方斜面が急であるため,有機物流入のタイプは上空から直接流路に落下する場合(直接流入)と,一度林床に落下した後側方斜面から転落する場合(側方流入)に分けられる.本研究は,1次渓流における直接流入と側方流入の特徴を明らかにすることを目的として落下有機物の種類と量の調査を行った.

方法

北海道石狩市内を流れる濃昼川支流において,2001年6月から11月まで調査した.調査地の流域面積は0.1km2,流路平均勾配は約19%,側方斜面勾配は約46%,水面幅は0.5〜1mである.調査区間内に,開口部が0.5m2の円形トラップを(直接流入),河岸斜面に底辺0.4m高さ0.3mの方形トラップを(側方流入)5基ずつランダムに設置した.両トラップとも毎週回収して器官ごとに分類し乾燥後計量した.分類群ごとに粉砕し,CHNコーダーにて窒素,炭素含有量を測定した.

結果と考察

有機物の総直接流入量は472g/m2であった.総側方流入量は229g/mであった.葉の占める割合は,直接流入で83%であった一方,側方流入では73%で,繁殖器官や木質の占める割合が比較的多かった.同じ区分に分類された場合でも直接流入と側方流入では炭素や窒素の含有率が異なり,流路に流入するまでの時間差や同じ分類群内での種類の差を反映していると考えられた.今後,DEMを用いて1次渓流の抽出を試み,今回得られた有機物流入量を乗じることにより,源頭域における総有機物流入量の 広域的な試算を行う.その結果を用いて水系内における炭素貯留場所としての源頭部の評価を行う.

日本生態学会