| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-001
耕作放棄は食料生産や農地の有する多面的機能を低下させる主な原因と考えられている。耕作放棄地に成立する植物群落の特性を明らかにすることは,農地の効率的な管理や多面的機能の強化に寄与すると考えられる。今日までも,耕作放棄田を中心に植生の構造やその決定要因に関する研究が行われてきた。その結果,耕作の再開や,生物多様性の保全を意図した管理手法が提案されてきた。しかし依然として,管理停止の長期化した耕作放棄地の植物群落構造やその決定要因は十分に明らかにされていない。
そこで本研究では,関東地方の畑地および水田の放棄地を対象に,そこに成立する植物群落の構造とその決定要因を解析した。植生調査は茨城県南部から,千葉県北部に至る15地域を対象とした。地域内の68地点の耕作放棄地において,地点毎に3つのコドラート(2 m×2 m)を設定し,合計204の植生資料を得た。これら植生資料について,優占種に着目すると,クズ,カナムグラ等のつる植物の優占する群落,アズマネザサの優占する群落,ススキ,セイタカアワダチソウ等の乾性草本の優占する群落,ミゾソバ,ヨシ等の湿性草本の優占する群落に大別された。この4群落の種数(平均出現種数 ± 1 SD)について総当りでt検定(Bonferroni 補正, P < 0.001)を行った結果,つる植物優占群落(6.5 ± 2.7)とアズマネザサ優占群落(5.0 ± 3.6)が,乾性草本優占群落(10.7 ± 4.7)と湿性草本優占群落(10.6 ± 3.4)に比べ有意に小さかった。今後さらに群落内の詳細な種組成の違いや各群落の成立要因について,放棄年数や土壌条件等の影響を考慮して検討したい。