| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-003

貧栄養環境下に生育する熱帯性針葉樹Dacrydium pectinatumの実生定着様式

*宮本和樹(森林総研四国), Reuben Nilus(サバ森林研究センター)

ボルネオ島に分布する熱帯ポドゾル上に成立する熱帯ヒース林(ケランガス林)はその特殊な環境ゆえに固有の樹種がみられる森林生態系である。マレーシア・サバ州には種組成や森林構造が異なる2つのタイプの熱帯ヒース林(Dacrydium pectinatum-Tristaniopsis sp.タイプとShorea venulosa-Hopea pentanerviaタイプ)が同所的に分布する。これら2つの森林における種組成や森林構造の違いを決定付ける要因ついてはこれまで明らかにされていない。本研究はDacrydium-Tristaniopsisタイプの優占種である熱帯性針葉樹Dacrydium pectinatum(イヌマキ科)を中心に、優占種の実生(樹高1.3m以下)の分布状況を、ライントランセクトを用いて調査し、微地形等の環境要因との関係を明らかにすることを目的とした。Dacrydiumの実生の出現頻度とトランセクト上の傾斜との間には有意な負の相関がみられ、傾斜角の小さい場所に分布する傾向が示された。また、腐食層の厚さとの関係を調べたところ、腐食層の薄い場所で高い出現頻度となる傾向がみられたが、傾斜角ほど明瞭な傾向にはならなかった。2つのタイプの林分に共通して出現するHopea pentanervia(フタバガキ科)の実生についても同様な傾向がみられ、傾斜角と腐食の厚さそれぞれについて有意な負の相関を示した。以上のことから、一方の森林タイプに優占するDacrydiumだけでなく、Hopeaのような共通種でも微細な環境の違いに反応して出現頻度が異なることが示唆された。

日本生態学会