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一般講演(ポスター発表) P1-010
林分構造や林分構成種の生理的特性は物質生産に大きな影響を与える.伐採などの人為撹乱後に成立する二次林の初期林は成熟林と比較して成長が速く,林分構造の変化が大きい.このような時期の林分は成熟林の林分構造や構成種の成長特性と異なると考えられる.本研究では幼齢林における林分構造と成長特性を明らかにし,成熟林と比較する.
岐阜県高山市乗鞍岳南西斜面に位置する幼齢林(9年生)と成熟林(約50年生)において,生残,胸高直径(DBH),相対光量の測定比較をおこなった. また,それぞれにおいてDBHの相対成長速度(RGRD)をもとめ,構成種を高木,亜高木,低木の生活形に区分した.
幼齢林の林分構造は各生活形の種が等分ずつ占め,直径階分布はL字型となり,光は下方まで良く届いていた.成熟林と比較して,胸高断面積合計(BA)が小さく,RGRDは成熟林の11倍高かった.生活形ごとにみると,高木種のRGRDがもっとも高かった.幼齢林は個体サイズが小さいが,RGRDが高いことから成長が旺盛であることがわかる.また光が下まで透過していることから,どの生活形の種も光を十分に受けているため,各生活形が均等に存在できると考えられた.
成熟林の林分構造は高木種が約80%を占め,直径階分布は山型となり,光は上方ですぐに減衰していた.生活形ごとにみると,亜高木種のRGRDが高かった.成熟林は個体サイズが大きいが,RGRDが低いことからあまり成長していないことがわかる.またもっとも光を受けることができる高木種の成長が低いことから,全体的な成長の低さも光の減衰によるものでないことが考えられた.
以上のことから,幼齢林は成熟林と比較して圧倒的に成長が大きいことがわかった.その理由の一つとして林分下方の種まで光が十分に得られることが考えられた.また,構成種の生理的特性の変化も考えられた.