| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-015

植物の分布に基づく赤井谷地の植生

竹原明秀(岩手大・人文社会・生物)

福島県会津地方には大小様々な湿原が分布し,それぞれ異なった湿原形態からなる。それらのうち,赤井谷地は海抜525mにある高層湿原で,陸化型の泥炭ドームからなる点でわが国希有な湿原として知られる。ここではホロムイソウ,ホロムイイチゴ,ガンコウランなどの寒地生植物が生育することから,国指定の天然記念物(指定面積43.56ha)となっている。

本研究では,赤井谷地内の植生を把握するために相観に基づく一般的な植生調査を行うとともに,50m間隔の格子を設定して157交点での植生調査に基づく植物の分布調査を行った。

相観に基づく植生調査から,14型の植物群落が確認され,ミカヅキグサ−ハリミズゴケ群落,ヌマガヤ−イボミズゴケ群落,ツルコケモモ−オオミズゴケ群落,アカマツ−チシマザサ群落,ハンノキ−ミズバショウ群落が広い面積を占めた。しかし,多くの群落では共通に出現する湿原植物が多く,その優占度の大小による相観の差異が大きかった。一方,157交点で確認された植物は66種で,ハリミズゴケを除くミズゴケ3種(イボミズゴケ,ムラサキミズゴケ,オオミズゴケ)やヨシなどの9種が50%を超す高い頻度で出現した。それに対して,40種は出現頻度が10%以下で,うち24種が2地点以下であった。これらの植物の分布様式は全域に分布する型(ヨシなど),南西部に分布しない型(イボミズゴケなど),中央部〜北部に分布しない型(ヤマドリゼンマイなど),北部〜東部に分布する型(ハリミズゴケなど),北部〜中央部に分布する型(ホロムイソウなど)などの10型に分けられた。これらを総合的に判断した結果,赤井谷地の植生は泥炭ドーム上での相対的な位置が大きく関わり,水分・栄養条件などに対する種の持つ生態的地位を反映していると考えられた。

日本生態学会