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一般講演(ポスター発表) P1-016
維管束着生植物(以下着生植物とする)は,その生活史の全てまたは一部を完全に地上から独立して生活する植物である.日本の照葉樹林においては,種多様性の高さに貢献する重要な存在であると同時に,そのハビタットを成熟した照葉樹林に依存していることが知られている.しかし,日本の照葉樹林は古くから人為の影響を受けてきたため,着生植物の生育に適した原生的で大面積な照葉樹林はほとんど残されていない.そのため,着生植物の多くがその個体群の存続を危ぶまれる状況にあるが,着生植物の生態に関する知見は乏しい.そこで本研究では,特にホスト樹木の提供する環境に着目して,着生植物のハビタット特性を明らかにすることを目的とした.
調査は2007年2-10月にかけて,宮崎県綾町大森岳に残存する成熟した照葉樹林に設置されている固定調査区(綾リサーチサイト)内で行った.固定調査区内に80×120mの調査区を設定し,調査区内に生育するDBH20cm以上の樹木について,着生している維管束植物の種名,幹周長,樹高,樹種を記録した.また,固定調査区内における過去の調査資料から,ホスト樹木の成長量を算出し,生育立地を特定した.着生植物はラン科植物とシダ植物,直立性と匍匐性という機能群に分類し,大きさ,成長量,樹種,立地といったホスト樹木の特性が着生植物の出現種数に与える影響を,一般化線形モデルを用いて解析した.
調査の結果,偶発的な種を除く23種の着生植物が確認された.ホスト樹木の特性については,大きさや樹種は多くの機能群の出現種数に影響を与えていたが,その他の要因の重要性は機能群ごとに異なっていた.ラン科植物と比較するとシダ植物では立地の重要性が高く,谷底面や谷頭部に多い傾向があった.また,直立性の種と比較すると匍匐性の種では成長量の重要性が高いことが示された.