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一般講演(ポスター発表) P1-018
太平洋側地域の落葉樹自然林における樹木の動態
森広信子
東京都西多摩郡奥多摩町、日原谷奥の雲取山北東面に位置する、標高1450mに、0.98haの永久方形区を設置し、高さ1.3m以上の樹木の大きさと位置をすべて記録し、以後は5年ごとに生残と大きさの再測定を行っている。
調査を開始してから10年の間に、個体数ははじめの71%まで減少したが、胸高断面積は0.98%の減少にとどまり、主に小径木が枯死し、生残個体の肥大生長がそれをほぼ相殺しているようだ。枯死個体の死亡要因が特定できるものは少なく、リョウブとウラジロモミでシカの樹皮食害による枯死が数個体、谷地形の部分で土石流の直接被害を受けたと思われるものが2個体あっただけである。小径木が圧倒的に多いリョウブ、ケアオダモ、ハクウンボクの個体数減少が顕著だったが、同様に小径木の多いコハウチワカエデはそれほど減少していない。
林床植生の変化では、はじめ広く林床を被っていたスズタケが、シカの食害によってほとんどなくなり、樹皮食痕が目立つようになった。大径木の枯死によるギャップの形成が4ヶ所あり、また1995年に隣接した場所で形成されたギャップの追跡も行っているが、全体を通じて新規加入個体はわずかで、この原因としてシカの影響があるのではないかと思われる。