| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-019
火入れや採草、放牧などの人為的干渉によって形成されている半自然草地は草原生植物の生育場所である。しかしながら戦後の農業構造の変化や生活様式の変化により半自然草地の面積は減少し、現在多くの草原生植物が絶滅危惧種や指定植物として取り上げられている。
草原の管理として火入れや採草、牧畜などを行うことで植生や希少種の管理が行われていることはすでに知られている。しかしながら地形の差違による環境の変化までも考慮に入れた管理はなされていない。そこで本研究では火入れ地において地形による植生の違い、特に希少種の分布の違いを明らかにし、その原因となる環境を明らかにすることで草原一帯の希少種の保全を図ることを目的とした。ここでは出現した植物の中で大山隠岐国立公園の指定植物リストに指定されているものを希少種として定義した。調査は岡山県蒜山地域の現在でも火入れが行われている場所で行った。南向き斜面と北向き斜面の尾根部、谷部それぞれの上部、中部、下部の計12か所の地形に区分し、植生の上層に出現した種と下層に出現した種に分けて植生調査を行った結果、植生は3グループに分類できた。調査区の各環境データとして気温、斜度、土壌のA0層の厚さ、土壌硬度、植生上の開空率、地際の開空率を測定した。その結果、希少種の出現が多い地点は下層の種数が多く、下層の種数は下層開空率が高いほど増加していることが分かった。また傾斜が急なほど上層の積算優占度は減少し下層開空率が増加する傾向が見られた。これらのことから、傾斜が急なところに希少種が分布すると考えられる。すなわち火入れ地の植生は、春に火入れという同様の撹乱を受けたにもかかわらずその後の植生は地形により違いが生じることが分かった。そのため、地形を考慮にいれた植生管理は希少種の保全に効果があると示唆された。