| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-020

北海道胆振地方におけるコナラ優占林の森林属性 ―南北斜面間の比較―

*石岡 亮,並川寛司(北教大・札幌・生物)

北海道胆振地方に分布するコナラ優占林において,南北斜面間の森林属性の違いを明らかにするため,対象林分をほぼ南−北方向に横切るように50 m×200 mの調査区を設定し,高さ2 m以上の樹木を対象に毎木調査を行った.また,レベル測量により調査区の地形を記載した.

調査区の地形をみると,調査区の長軸に対し垂直に谷が走り,谷を介して南斜面と北斜面が向き合う地形を呈していた.この南斜面(50 m×30 m)と北斜面(50 m×40 m)を10 m四方の区画に細分し,各区画で高さ2 m以下の草本層について植生調査を行い,土壌水分量を定期的に測定した.また,成長錐で材サンプルを採取し,樹齢の推定と年輪幅の測定を行った.

植生調査の結果,北斜面ではチョウセンゴミシやヤマドリゼンマイが優占するのに対し,南斜面ではミヤコザサが優占するなど草本層の植生に明瞭な違いが見られた.また,総出現種数は南斜面71種,北斜面96種であった.区画毎の種数の中央値は,南斜面30種,北斜面40種で有意な差が認められた(U-検定).土壌水分計を用い,南斜面で77点,北斜面で99点,7月2日から10月3日まで12回土壌水分量を測定した.その結果,測定日の前7日間の降雨量が30 mmを越えた場合,南斜面に比べ北斜面で有意に大きな値が観察された(t-検定).

推定した樹齢の頻度分布をみると,55‐60年にモードがみられ,一斉に更新した林分であることを示していた.また,主要樹種であるコナラとミズナラについて,材の中心を含むサンプルを用い,5年毎の材積量の変化を比較した.何れの斜面でもコナラの方が成長が速く,その差は北斜面でより顕著だった.しかし,南北斜面間のコナラの総合優占度(相対個体数と相対胸高断面積の平均)を比較すると,北斜面では南斜面に比べ小さな値を示していた.

日本生態学会