| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-021

栃木県益子町高館山におけるスダジイの分布様式

*加部祐介,西尾孝佳(宇都宮大・雑草セ),Siegmar W. Breckle (University of Bielefeld, Germany)

栃木県南東部に位置する高館山は,暖温帯性気候と冷温帯性気候の交差する地理的条件下にある低山(301m)で,照葉樹林,落葉樹林,針葉樹林が混在する植生景観を形成する。様々な植物の北限,南限,隔離分布が山中で確認され,植物地理学的にも重要な地域とされる。この特徴的な植生構造は1200年前の西明寺建立以降,人為影響を受けつつも維持されてきたと考えられるが,戦後の造林地増加の結果,自生の森林植生は断片化し,マツ枯れの影響も受け, 一部では荒廃が進行している。本研究では植生の気候的移行部における森林構造の変化が,高館山を林分形成北限域とするスダジイの分布様式に与える影響について解析を行った。

高館山の森林植生構造の現況を明らかにするために,TWINSPAN法による群落分類及びその地理的分布の解析を行った結果,1)スダジイ,アラカシなどが特徴的な照葉樹林型,2)コナラ,アカマツ,リョウブなどが特徴的な落葉樹林型,3)出現種数が少なく,スギ,ヒノキが特徴的な造林地型に分類され,照葉樹林型は主に西明寺周辺に,他2型は山域全体に分布した。群落型間でのスダジイの出現頻度の比較では,いずれの群落でもスダジイは確認されたが,種子供給源と推定される照葉樹林型から近距離の群落型で多く出現する傾向にあった。またスダジイの分布に果たす冬期の影響を解析した結果,a)越冬により,落葉樹林型では実生及び萌芽の個体数が減少したのに対し,照葉樹林型では萌芽数が増加した,b)越冬後,落葉樹林型で枯死した個体の多くが葉表面に赤斑を生じていた,c)冬季のクロロフィル蛍光測定では落葉樹林型の個体でFv/Fmが有意に低かった,などが示唆された。

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