| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-022

扇状地河川における植生と環境条件との関係

*白水由季(信州大・理),島野光司(信州大・理)

希少種であるカワラニガナやツメレンゲが生育し、比較的自然度が高い梓川(長野県松本市)の礫河原で、植生と環境要因との関連を明らかにし、希少種の保全や、在来植生にとって必要な環境について考察した。また、同じ扇状地でも砂が多く堆積する立地を持つ千曲川でも調査を行い、礫河川と砂河川で植生の違いも考察した。

梓川では春、夏、秋の3回、千曲川では夏から秋に1回、植物社会学的植生調査を行い、同時に川からの距離、比高、粒径を記録した。解析には、種ごとの被度の中央値を用いてDCAを行い、距離、比高、粒径に加えてラウンケアの生活型、帰化率との相関を調べた。

梓川と千曲川を比べると、DCAでは千曲川の立地は1軸で大きな値を持ち、これは比高が低く、粒径が小さく、川から近く、1, 2生草本が多いことを意味していた。梓川の立地は、これと逆の傾向を示した。砂河川の千曲川では、クサヨシ、オギなど低湿地に出現する種や、カヤツリグサやスベリヒユなどの畑地の1年生草本が多く確認された。一方、礫河川の梓川では、テリハノイバラ、カワラハハコなど礫地に出現する種が確認された。

梓川だけで見ると、川に近い場所にはオオイヌタデなど1, 2年生草本が多く、遠ざかるに従い木本のニセアカシアや蔓性植物が多くなっていた。距離、比高、粒径が中程度の砂礫地には、カワラニガナなど河原特有の種が出現した。また、季節的に見ると、春はカナビキソウやスミレ、夏はカワラサイコやコマツナギ、秋はカワラナデシコやノコンギクが開花・目立っていた。

以上のように、河川には様々な立地(異なる川からの距離、比高、粒径、撹乱頻度など)が存在することで、多様な河川植生を維持していると考えられる。

日本生態学会