| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-023

タイ北部の熱帯山地林における焼畑二次植生の出現パターン

*福島万紀 (京大・農), 神崎護 (京大・農), J.F. Maxwell (CMU Herbarium), P. Saipothong (ICRAF)

タイ北部の標高1,000 m以上の山岳地域にはブナ科、クスノキ科、ツバキ科などの樹木が優占する下部山地林が広がり、様々な山地民による焼畑耕作が作り出した二次林が卓越する。焼畑二次林構成種の出現パターンとその決定要因を理解することは、人為攪乱に対する同地域の森林生態系の許容能力を評価するために大変重要である。本研究では、タイ北部チェンマイ県北西に位置する下部山地林で1年耕作、10年休閑のサイクルで焼畑耕作を行うMY村 (18°32’ N, 98°32’ E) において植物社会学的方法で植生調査を行い、着生植物を除く全種について被度および群度を記録した。頂部斜面、上部谷壁斜面および下部谷壁斜面に位置する焼畑休閑林および非耕作林全54調査区から、木本254種65科、木本性つる47種20科、非木本性つる41種24科、草本73種32科、およびタケ2種が出現した。各種の被度の合計値を用いたDCA分析によって序列化された1軸および2軸の寄与率はそれぞれ22.2 %および1.6 %であった。1軸スコアは頂部斜面、上部谷壁斜面、下部谷壁斜面の順に有意に高く、2軸スコアは休閑年数や最上層の高さと相関があった。クラスター分析で得られた5つの植生グループはPhoebe lanceolata,Capparis micracantha, Eupatorium odoratum, Wendlandia tinctoria, Aporosa octandraなどの二次林種で指標され、DCAの1軸スコアに対して序列化される傾向が強かった。以上の結果から、同地域の下部山地林における10年休閑サイクルの焼畑二次林では、立地環境が種構成の出現・回復パターンの主要な決定要因になっていることが示唆された。

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