| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-027
[はじめに]琵琶湖周辺の沿岸部には,琵琶湖と水系を共にする「内湖」と呼ばれる約40の小湖沼が現存している.これらは,琵琶湖の湖岸植生などへの種子供給源として重要な役割を果たしていると考えられるが,湖岸植生(佐々木, 1996)と比べ、その植物群落はほとんど報告されていない.本研究は,内湖の湿地植物群落について群落分類を行い,分布および生育立地を明らかにすること事を目的とした.
[方法]植物社会学的方法(Braun-Blanquet,1964)に準拠し,現地植生調査を行い,種組成に基づく群落分類を行った.
[対象]西の湖,伊庭内湖,曽根沼,小松沼,浜分沼等の主要な18内湖.
[調査結果および考察]1999年〜2006年に得られた348の現地調査資料から以下の植生を区分した。
・オノエヤナギクラス:1群集,5亜群集,1典型群集,1変群集,1群落
・ヨシクラス:5群集,4亜群集,1典型群集,9群落
・ヒルムシロクラス:1群集,12群落
ヨシ優占群落としては,下層にカサスゲを伴うカサスゲ群集(Caricetum dispalatae )等のスゲ類によって特徴づけられる群落が広く見られる.氷河期遺存の植物群落と考えられるオニナルコスゲ群落(西の湖,曽根沼),ツルスゲ群落(西の湖)の生育が確認された。いずれも日本での分布の西南限である.オニナルコスゲ群落は,ヨシ刈りや火入れ跡地の二次的な植生域に主に分布していた.ツルスゲ群落は,土地利用の困難な泥炭地に主に分布していた.これらの群落周辺には,ヌマゼリ等の絶滅危惧植物(環境省RDB,近畿RDB,滋賀県RDBより)も多数種認められた.
内湖における氷河期遺存の植物群落や絶滅危惧植物は,1)ヨシ刈り,2)火入れ,3)泥炭地,4)水位変動域により,植生遷移が抑制されことで残存,成立している事が示唆された.