| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-029
東京都区内には皇居をはじめ、いくつかの大規模な孤立した樹林が存在する。面積約20haの広がりを持つ国立科学博物館付属自然教育園もその一つである。そこは第二次世界大戦中に荒廃したが、1949年からは人為を極力排除した状態で管理されている。自然教育園では胸高周囲30cm以上の樹木個体を対象に1965年に毎木調査が行われ、1983年以降は2007年までおよそ5年ごとに調査が行われてきた。園内全域には1965年に4118本が生育していたが、その後1983年に7568本、1987年7820本、1992年8035本、1997年8994本、2002年10391本、2007年に10872本へと増加している。この42年間に種数では24種、個体数では6754本が増加した。
樹木個体数の変遷では、アカマツ、クロマツ、ヤマグワ、アカメガシワなどの常緑針葉樹種や先駆樹種が含まれる「減少型」、ウワミズザクラ、コナラ、ヤマザクラ、ヌルデ、キハダが含まれる「増加・減少型」、ケヤキ、ミズキ、エノキ、イイギリ、ムクノキなどの変化の少ない「安定型」、シュロ、イロハモミジ、シロダモ、ヒサカキ、アカガシ、シラカシ、ヤブツバキ、モチノキ、タブノキ、トウネズミモチ、ネズミモチ、オオモミジなど継続的に増加している「増加型」、それ以外の5つのタイプに類別できる。
全体的な傾向としては、常緑針葉樹の減少、落葉広葉樹の停滞、常緑広葉樹とシュロ類の増加がみられる。また、今回の調査でみられたキアシドクガの食害によるミズキの衰弱・枯死のように「突発的なイベント」も変化に影響を及ぼしている。関東低地では人為攪乱がなければ時間の経過と共に確実に常緑広葉樹林へ進行するが、ミズキの枯死のように突発的なイベントも遷移の進行に関与している可能性がある。