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一般講演(ポスター発表) P1-032
本研究では韓半島東部から南部、島嶼部の済州島、鬱陵島と九州北部、対馬との森林群落を比較検討し、地域間の植生帯と群落組成の類似性について検討した。
植生調査資料1209を用いて表作成した結果、30の群落を区分できた。組成表の中には、それぞれの場所に限って生育する地域間の異質性を示す多くの種を含む一方、固有性は低いがいくつかの地域に共通して常在度の高い種群がみられ、対象地域の組成の共通性と異質性をみることができた。各地域の植物群落を10の森林型に置き換えて比較すると、森林型とその分布には地域性があるものの、基本的には低海抜地から高海抜地に向かって常緑広葉樹林、落葉広葉樹林、亜高山針葉樹林の高度的な配列順序になり、森林型の種類は地域で特徴があった。地域毎のフロラの共通性と植生帯レベルでの共通性についてJaccard係数をもとに検討した結果、群落組成の共通性は、分布高度では低地ほど高く、高度が上昇するほど低い。さらに、地理的には、韓半島の他地域との違いが明瞭であるが、全体では地理的に近いほどフロラの類似性が高かった。しかし、低海抜地では地理的に南部のものほどフロラの共通性が高いことがわかった。また、DCA法による解析では、各地の常緑広葉樹林の森林型が一つにまとまるが、それ以外は地域的にまとまり、それぞれ離れた位置にあった。また、現在の温度環境と強い相関があった。
これら全体の結果から、調査地域の植物群落は、過去からの歴史的なフロラの構成を基本としながら、植物群落の形成と分布には現在の温度要因が強く関係している。地理的に近く、かつ温度環境に恵まれている低海抜地域の森林型ほど群落間の類似性が高く、地理的距離が離れ、温度が低い高海抜地になるほど、群落間の組成の違いが顕著で群落の組成的独自性が強くなる。