| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-033

平野部河辺林に分布する山地性植物と環境要因

*横川昌史(滋賀県大・環境),森小夜子(滋賀植物同好会),近雅博,野間直彦(滋賀県大・環境)

滋賀県湖東平野を流れる川の河辺林のように、照葉樹林帯にある河辺林の中には、主な生育環境を冷温帯にもつ山地性植物が多く生育していることがある。これらの植物の中には地方版のレッドリストに掲載されている種もあるが、林の常緑化・竹の繁茂による林内の光環境の悪化や河川改修工事による生育地の分断・減少といった問題がある。そこで、これらの種の保全に役立てるために、普通種も含めた植物の分布と環境条件を調べた。

調査地は、琵琶湖に注ぐ犬上川の河口から約1.5 km上流にある河辺林で、面積は約5.8 haである。ケヤキ、エノキ、ムクノキを主とする林で、現在はマダケが多く混生している。標高は90 m、年平均気温は14.4 ℃である。この林において、2本のライントランセクトで、下層植生(1 m×1 mの調査枠内)の種の被度を測定した。また、林冠の空隙率、土壌の体積含水率・三相構造、土粒子の粒度組成、比高の測定を行った。

下層には、50科78種の植物が出現し、35.8 %が山地性植物と考えられた。林の中央部分において、キクザキイチゲやイチリンソウが出現した。周囲にはワサビやコチャルメルソウも生育しており、山地性植物が多い場所で、林冠の空隙率、砂の割合が高く、土壌水分は中程度であった。出現種全体を見ると、林内に広く分布している種(カテンソウ、ウバユリなど)と、分布に偏りがある種(シャク、タニギキョウ、ミヤマカタバミなど)があった。空隙率・含水率・粒度の分布は一様ではなかった。これらの環境条件の分布と林床植物の分布の関係を今後、さらに検討する必要がある。

日本生態学会