| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-040

富士山北西麓の半自然草地の群落構造と動態

*安田泰輔,北原正彦,杉田幹夫,池口仁,中野隆志(山梨県環境科学研究所)

草原の構成種は盛んな局所的空間動態が観察される。このような構成種の空間動態は群落の時空間的動態を起こす要因であり、小さな空間スケールにおいて群落の種構成は時間的に変動しやすく不安定であること、一方、大きな空間スケールになるにつれて種構成の時間的変動は少なく安定的であることが報告されている。本研究では、富士山北西麓に位置する放棄草地において、このスケール依存的な種構成の安定性に対する構成種の局所的空間動態の影響を解析した。

本調査地においてススキ優占群落とトダシバ優占群落を選択し、それぞれに10cm×10cmのコドラートを360個(6個×60個)隣接させた調査区を1つずつ設置した。調査は2005年6月から10月まで毎月1回、各コドラートに出現した種を記載した。コドラートを0.01m2から3.6m2まで10段階の空間スケールをとり、各空間スケールで種数と種構成、時間的な種構成の置換率を求めた。

両調査区において種構成は小さな空間スケールで変動しやすく、大きな空間スケールほど安定的な傾向があった。群落構成種には頻繁な空間動態がみられ、特に元の空間分布の近接に移入する傾向をみられたが、種ごと、区間ごとに異なった傾向があった。

構成種の空間動態の影響を解析するため、構成種の移入が元の空間分布に対してランダムであった場合(ランダム移入)と移入が元の空間分布の近接でのみ生じる場合(近接移入)の各シミュレーションを格子モデルにて行った。ランダム移入では観察された種構成変動よりも不安定になる傾向があり、一方、近接移入ではより安定的だった。これらの傾向は中程度の空間スケールで顕著だった。

以上の結果から、比較的大きな空間スケールで種構成が安定的である理由の1つとして、構成種の移入の空間パターンが重要であると考えられた。

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