| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-041

照葉樹林域における微地形単位ごとの夏緑広葉樹二次林の発達の相違

*持田幸良,村嶋秀明(横国大教育人間科学部)

伊豆半島東部(静岡県熱海市郊外)標高300m付近の夏緑広葉樹が優占する二次林を対象に森林群落の発達と地形との関係について解析を行った結果,地形要素に依存した森林発達の違いが明らかとなった.調査地域とその周辺域で植生調査(Br.-Bl. 1964)を行い,同一な微地形で均質な群落が成立している立地を抽出し調査区とした.その抽出された頂部平坦面と上部谷壁斜面にそれぞれ400m2と450 m2の方形区を設定し植生調査,毎木調査,地形測量と土壌調査を行った.調査地周辺は上部斜面域がコナラを主とした夏緑広葉樹林二次林とスギ・ヒノキの人工林で,下部斜面域はケヤキやイロハモミジが優占する夏緑広葉樹林二次林となっている.しかし下部斜面域は人為的な地形改変が大きく,群落としてのまとまりが小さくて調査区としての最小面積が確保されなかった.また土地利用の履歴は頂部平坦面は畑作が,上部谷壁斜面は薪炭林として利用されていた可能性が考えられるが,どちらも40年以上前に放棄され両者とも森林再生途上にあるものである.

頂部平坦面の優占種はニシキウツギで,アブラチャン,ヤマザクラ,コナラの順であり,上部谷壁斜面ではコナラが優占し,ヒサカキ,ヤマボウシ,アブラチャンの順であった.両調査区の木本層(低木層から高木層)では個体密度,出現種数と多様度指数に有意な差は認められなかったが,地上部材積量では上部谷壁斜面が2.5倍ほど多かった.また林床植生(草本層)の出現種数は木本種と草本種のどちらも頂部平坦面で多く,さらに実生・幼樹の個体密度は頂部平坦面が上部谷壁斜面に比べ2倍以上高かった.土壌は黒ボク土で層位はどちらも発達していたが,頂部平坦面がやや湿潤であった.これらから過去の土地利用形態の違いはあるものの,それぞれの立地の違いが二次林発達の相違に反映しているものと結論付けられた.

日本生態学会