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一般講演(ポスター発表) P1-042
千曲川中流域は,他の大規模河川と同様,高水敷の固定化と,そこに繁茂する外来植物の繁茂という問題を抱えている.そこで,2005年から2006年にかけての冬期,千曲川中流域の高水敷を,流量確保のために,年に一度程度大雨で冠水する高さへの掘削が行われた.我々は,これにともなう種組成の変化をモニタリングした.
掘削前のもともとの高水敷では,春先からオギが出現していたが,春期に砂地だった部分からオオブタクサやアレチウリが初夏にかけて発生し,高水敷の面積を広く被っていた.
比高0.8mに掘削後再生した植物として,オオイヌタデ,クサヨシ,ヨシなどの在来種に混じって,オオブタクサ,アレチウリ,メマツヨイグサなどの外来種がみられた.掘削前後の土壌から蒔きだし法で埋土種子を調べた結果,掘削後に発生したこうした種は,埋土種子からの発芽であることが分かった.掘削前の土壌と,約1m掘削後の土壌では,蒔きだし法で発芽した植物種に大きな違いはなかった.こうしたことから,高水敷の掘削それのみでは外来種の駆除を行うことは困難であることが考えられた.
しかしながら,こうした状況は2006年の7月に起こった出水で大きく変化した.川辺を本来の生育地とするオオイヌタデは,冠水を受け,物理的になぎ倒されたあとでも再び起立し,開花・結実をするに至った.その一方でアレチウリは流され,オオブタクサは倒伏し,枯死することとなった.このように,立地が冠水する環境になることで広く優占する外来種を駆除する形になった.
加えて,水辺にはカワヂシャ,タコノアシ,ヘラオモダカなどの希少種,また,タマガヤツリ,ヌマガヤツリなど河川本来の植物が生育するようになった.このように掘削する立地の高さをコントロールすることで,外来種の駆除,ならびに地域の河川本来の植生を再生できる可能性があることがわかった.