| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-045

荒原生態系における土壌微生物群集の制限要因:海岸砂丘の土壌微生物に対する炭素・窒素制限

吉竹晋平(広島大・院・生物圏), 中坪孝之(広島大・院・生物圏)

海岸砂丘では植生が帯状に分布することが知られている。我々は第54回日本生態学会大会において、植生の乏しい海側プロットに比べてハマゴウが優占する内陸側プロットでは土壌微生物バイオマスが大きく、群集構造も異なることを示した。また、その要因として土壌有機物の蓄積が重要である可能性を指摘した。しかし、実際に土壌有機物の蓄積が土壌微生物の活性や増殖などをどのように規定しているかについては依然不明である。そこで本研究では、海岸砂丘における土壌微生物の呼吸活性・増殖・群集構造に対する基質制限の影響を検討することを目的とし、海岸砂丘から採取した土壌に対する基質添加実験を行った。

鳥取県米子市の弓ヶ浜において、海側および内陸側のプロットから土壌を採取し、C源としてグルコース、N源として硝酸アンモニウムをそれぞれ単独(C+区、N+区)、あるいは混合して(CN+区)添加した。添加後、赤外線分析計を用いた土壌呼吸速度の測定と、微生物のバイオマスおよび群集構造の解析のためのリン脂質脂肪酸分析を行った。

海側・内陸側のどちらのプロットにおいてもC源を添加した土壌(C+区、CN+区)で土壌呼吸速度の増加が認められたことから、海岸砂丘においては一次的には易分解性C源の不足が土壌呼吸活性の制限要因であることが示された。またリン脂質脂肪酸分析の結果より、C+区ではバクテリアが、CN+区では糸状菌が主に増加したことが示されたことから、このようなバイオマスの増加や群集構造の変化が土壌呼吸速度の増加に寄与していたと考えられた。今回の発表ではこれまでに硫気荒原や寒地荒原で行った同様の基質添加実験の結果と合わせて、荒原生態系における土壌微生物群集に対する基質制限について議論する。

日本生態学会