| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-048

縞枯れ林分構造のばらつきとその森林発達に伴う変化:「縞内」「縞間」の比較

*鈴木智之,可知直毅,鈴木準一郎(首都大・理工)

恒常風に起因する集団枯死とその後の一斉更新により縞枯れは生ずる。縞枯林には、発達段階の異なる稚樹林、若齢林、成熟林などが同時に存在する。また、各発達段階の林は帯状に分布し、かつ異なる標高に複数の帯が存在する。つまり同じ発達段階であっても、林分構造に局所的なばらつきがあり、そのばらつきは異なる帯間でのばらつき(以後「縞間変動」)と同一の帯の中のばらつき(以後「縞内変動」)からなる階層性が考えられる。

本研究は、縞枯林で、林分構造統計量の調査区間でみられるばらつき(変動係数, CV)を複数の発達段階において評価した。さらに、縞間変動と縞内変動の大きさを各発達段階で比較し、縞間変動:縞内変動比の森林発達に伴う変化を定量化した。

2007年、北八ヶ岳縞枯山に3発達段階×3帯×4反復の計36調査区(25〜100 m2)を設置し、樹高20cm以上の全木本の地際径、高さ、位置を記録した。解析にはベイズ統計を用い、分散一定モデルと分散変化モデル、非階層的モデルと階層的モデルなど異なる分散分析モデルをDIC基準で比較し、縞枯林の構造のばらつきの様式を調べた。

発達段階が進むほど個体密度の平均値は小さく、調査区間での密度のばらつき(CV)は発達段階によらず一定であった。一方、発達段階が進むほど、断面積合計(BA)の平均値は大きく、調査区間でのCVは小さかった。

各発達段階のばらつきを縞間変動と縞内変動に分けた階層的モデルでは、発達段階が進むほど密度・BAともに縞内変動に対して縞間変動が大きくなった。この縞間変動:縞内変動比が変化する階層的モデルは、DICが全モデルの中で最小であり、最も説明力のあるモデルであった。

まとめると、縞枯林には縞間・縞内という階層的なばらつきがあり、両者の比率は発達段階によって変化していた。

日本生態学会