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一般講演(ポスター発表) P1-049
クローナル植物は、個々のラメットの成長とともに、クローン成長により新たなラメットを形成することでジェネットの空間的な広がりを拡大することができる。この研究では、林床性のクローナル草本スズランにおいて、ラメットの動態(成長・枯死・開花)を調べることによりジェネットの成長を評価し、ラメットの成長とクローン成長の関係について明らかにすることを目的とした。
はじめに、スズラン集団内に28 m × 2 m のトランセクトを設置し、2005-2007年にかけてその中に出現した全てのラメットの位置と葉長を測定し、さらに遺伝マーカーを用いて各ラメットの遺伝子型を特定し、ジェネットの広がりを調査した。そしてこのデータをもとに、ラメット・ジェネットの分布と成長ならびにこれらに関わる要因について数理解析を行った。
トランセクト内には延べ2100ラメットが観察されたが、それらは主に4つの優占するジェネットに由来しており、空間的にも単一ジェネットが占有している場所と、複数のジェネットが混在している場所が認められた。これらのジェネットは5 m以上にわたって広がっており、いずれのジェネットにおいても分布の中心でラメット密度が最も高かった。そして、ラメットの成長はそのサイズや開花の有無に影響を受けているようであった。また、同一ジェネット内においても、分布する場所の違いにより成長率が異なっていた。さらに、同所的に存在しているラメットでも、その成長はジェネット間で異なっていた。一方、クローン成長による新ラメットの更新は、ジェネットの分布の末端部と比較して中心部でより盛んであり、クローン成長は分布を拡大よりむしろ占有した場所への定着に寄与していることが示唆された。