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一般講演(ポスター発表) P1-052
1997年4月〜7月に伊豆諸島・御蔵島で起きたミクラザサの一斉開花枯死・個体群の回復の開始以後,10年目の2007年8月に群落1平方メートルあたりの全植物体を採取し,開花時の親植物群落との比較において個体群の回復の程度を推定した。全生残個体数は62株,総稈数は79本,稈の高さ144.8 cm・直径6.2 mm,単軸型地下茎の総延長は1,288 cmであった。これらを開花時の親個体の群落と比較すると,個体数は7.3%,総稈数は62%,稈高は57.6%,稈直径は51.7%,単軸型地下茎の長さは74%の回復率であった。自己間引き枯死個体は34株で,これらと同様にやがて枯死すると判断される推定自己間引き個体は29株で,引き続く自己間引き率は46.7%と推定された。生残株を大:17株,中:29株,小:16株に区分すると,中型の45%,小型のすべてが自己間引き個体に相当した。単軸型地下茎を持った株は,大型で70.6%,中型では27.6%を占めた。5年目の調査結果と比べた顕著な違いは,それまで見られなかった単軸型地下茎から発生した稈が19本記録され,本格的なクローン形成の開始を示したことである。
1個体の成長過程は地下茎の発達過程を調べることによって跡付けられる。芽生えから1〜2年では直径2.5 mm,ネック長数mmの仮軸型地下茎が斜め下方にジグザグに発生する。6年目には直径5 mm,長さ2 cmの地下茎が左右両方向に発生し,六角形の網目構造が形成される。8年〜10年目にはネック長3.3 cmの網目構造が芽生えの位置から13 cm下方に形成される。単軸型地下茎は二又分岐の下方から発生することが多い。この過程で,数株の地下茎同士が組み合わさった数個の集合塊が形成され,上方に取り残された株は自己間引きされる。