| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-054
農地の生物多様性は作物生産に対して様々な生態系サービスを提供している。その一つとして種子食動物による雑草種子の捕食があげられる。種子捕食は雑草種子の重要な減少要因となり,雑草個体群の効果的な抑制手段の一つとなる可能性がある。農地のランドスケープ構造が複雑化するほど種子捕食が高まるという報告があるが,日本では農業の大規模集約化が進み,農地の生物多様性は低下している。雑草管理手段の一つとして種子捕食を活用した農地を設計してゆくためには,大規模集約化圃場における雑草種子捕食率を把握しておく必要がある。またそのような農地では周縁部の畦畔(あぜ)草地が種子捕食者の生息地,圃場内部への供給源として重要であると考えられる。
本研究では大規模集約化されたコムギ‐ダイズ連作圃場において,圃場内部と畦畔における外来イネ科雑草ネズミムギ(Lolium multiflorum)の種子捕食率および種子捕食者について推定を行った。調査はネズミムギの蔓延する水田転作圃場(静岡県中遠地域)において行った。調査圃場ではコムギ収穫後,不耕起管理でダイズを栽培した。ネズミムギ種子散布期である5月(コムギ収穫前)から出芽開始期である10月(ダイズ収穫前)までの夏期6ヶ月間の種子捕食率は,圃場内部および畦畔ともに約50%であった。圃場内部では捕食率の時間的変動が大きかったが,畦畔では9月中旬にピークが生じた。圃場内部では昆虫類(ゴミムシ類,コオロギ類)および哺乳類・鳥類が,畦畔では昆虫類が主な種子捕食者であると推定された。アリ類による種子捕食は少なかった。