| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-061
南西諸島の生態系には多くの固有種が分布し、特異な生態系が形成されているが、近年開発等による森林の分断化が進行している。分断化された森林では、個体数の減少や繁殖の量や質の悪化などを介して、個体群の維持が困難になると考えられる。一方、分断化された森林では外部から影響を受ける林縁部の面積が増え(林縁効果)、実生・稚樹などの定着がよくなることもある。そこで本研究では、分断化が樹木の個体群構造に与える影響を評価することを目的とし、分断化の履歴が異なるオキナワウラジロガシの個体群構造を比較した。
本研究では、徳之島内のオキナワウラジロガシ大径木が生育する保護林から、保護林面積や林道からの距離の異なる5地域を選定し、大面積林・林内区、大面積林・林縁区、小面積林・林内区、小面積林・林縁区(2ヶ所)を設けた。各地域に20m×20mのプロットを5プロット設置し、すべてのオキナワウラジロガシについて、DBH4cm以上の個体(成木)についてはDBHを、4cm未満の実生・稚樹については樹高を測定した。
成木のサイズ分布は小面積林・林内区以外は逆J字型分布を示し、安定して更新しており分断化の指標である保護林面積や林縁効果の影響はみられなかった。実生・稚樹のサイズ分布から林縁区では安定して更新し、林内区では不連続に更新しており、林縁区の方が定着に好適な環境であると考えられた。また定着後数年以内の小さな実生は、小面積林に比べ大面積林で個体数が大きかったことから、分断化された小面積林では種子生産あるいは初期の定着が悪いと考えられる。実生・稚樹段階で分断化の影響がみられたことから、今後は分断化の影響により個体群構造が変化していくことが予想される。