| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-064

バイケイソウの繁殖特性と個体群構造

*加藤優希, 荒木希和子, 大原雅 (北大・院・環境科学)

バイケイソウは大型の多年生草本であり、北海道では平地の湿った林床や草原に生育する。その繁殖様式には、種子による有性繁殖と、地下茎によるクローン成長の2つが存在する。有性繁殖については、開花・結実に年毎の豊凶があることが知られているが、そのパターンは十分に明らかにされていない。また、クローン成長については、開花ラメットが根茎の分岐により1~3個の娘ラメットを形成し、これを繰り返すことで水平方向に広がっていくことが報告されている(谷, 2005)。

本研究では、バイケイソウにおける有性繁殖とクローン成長の2つの繁殖特性が、個体群構造にどのように影響を及ぼしているのかを明らかにすることを目的とした。野外調査および実験試料の採集は、札幌市近郊の野幌森林公園と恵庭市の防風林内の、2つのバイケイソウ個体群において行った。

まず、3 m×6 mの調査区を各個体群に3つずつ設置し、その中の全シュートの位置と葉の枚数を記録した。そして、葉の枚数を基準にサイズクラスを分け、頻度分布によりサイズクラス構造を調査した。また、各シュートから葉の一部を採集し、マイクロサテライト8遺伝子座について遺伝分析を行った。そして、得られたmultilocus genotypesに基づき、ジェネットの広がりや、各個体群の遺伝的多様性、および遺伝的構造に関する解析を行った。

その結果、2つの個体群では、サイズクラス構造ならびに遺伝的構造に明瞭な違いが認められた。このことから、バイケイソウは有性繁殖とクローン成長の2つの繁殖様式を行っているが、各繁殖様式の貢献度が個体群間で異なるため、このような個体群構造における違いが生じているものと考えられる。

日本生態学会