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一般講演(ポスター発表) P1-068
アオキ(Aucuba japonica Thunb. (Cornaceae))は本調査地である熊本県水俣市に位置する照葉樹二次林の林床に数多く生育する低木種である。33haの調査地内に66つの20m×20mの方形調査区を設置し、出現したアオキの個体数と微地形変数(標高、傾斜、地形型(谷、尾根、斜面))や林床光環境(夏季と冬季)との関係から、アオキの分布の集中性が生息地ニッチへの特化に強く影響された結果であるかを明らかにした。
森下のIδ指数から、アオキの分布は異質的で集中分布であることが確認され、20m以下の調査区内の範囲で自己相関があった。しかし、マンテル試験とモーランのI統計量による解析から、40mより大きい調査区間レベルでは自己相関がなく、アオキの分布は隣接する調査区からの密度効果の影響を受けていないことが明らかになった。
パーシャルマンテル試験から、アオキの分布は微地形と林床光環境に強く影響を受けた結果ということが示された。また、アオキは谷の落葉樹下の調査区の林床に数多く分布することがモンテカルロランダマイゼーション試験によって明らかになった。冬季の良好な林床光環境と谷部の土壌条件がアオキの集中分布の要因となる主要な生息地ニッチであると考えられる。
以上から、本調査地の林分におけるアオキの集中分布には個体分散能力の制限に起因する密度効果ではなく生息地ニッチへの特化が強く影響を及ぼしていると結論付ける。